ある春の日暮れ
八重桜の梢を見上げていると、澄んだ空が張り詰めて破れそうなうすい菫色をしていて、
ちょうど月が唇の形をしてほんとうににやりと笑っていた。左下に金星がほくろのようにきらきら輝いていた。
あ、顔なんだなあと思った。
稲垣足穂の「一千一秒物語」と「第三半球物語」を読みたくなった。
トンコロピー。お月様に夜道ですれちがいざまに唇奪われる。月のまろうどが車から冗談みたいにぞろぞろ出てくる。土星が酒場で泣き上戸からみ酒。
重要な場面はすべて頭の中に刻まれて私はもうページを繰らなくてもいつでもあの童話の天文学者の世界に入ることが出来る。擬人化されきまぐれに地上に降りた星々。
短編では「カールと白い電燈」、「黄漠奇聞」、あといろいろあったなあ。
足穂童話はとてつもなく美しい。奇跡みたいだ。たまに独壇場の足穂節エッセイもいいが、意味不明すぎるときがある。慣れればそれも面白いが最初は鼻じろむ。それを1冊の本に一緒に突っ込んでいるのも足穂趣味だろう。
で帰ったら部屋がカールと白い電燈状態だったので借りてきた本読めないじゃないかーと眠い目こすりながらスーパーに走って電燈入れ替えて夕寝しました。
2007-06-03
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